欠地王ジョンの憂鬱

みなさんこんにちは。

今日は10月18日は1216年にイギリス王政史上最も嫌われている!と言っても過言ではない「欠地王ジョン」が亡くなった日に当たります。ただ、ジョンについてはその兄リチャード1世がイング歴代王の中でも最も人気の高い英雄的存在であったため、その対比上わざと低く評価された面もあるようです。しかも実はジョンは他の王では及びもつかない世界史史上の金字塔を打ち立てた人物でもあるのです。

ジョンの兄リチャードは獅子心王(ライオンハート)の異名を誇る第3次十字軍の英雄であり、大変に軍事的才能に恵まれた存在であったようです。イングランド国内では大変な大衆人気があり、敵方のムスリムたちからもしばしば称賛された記録が残っています。しかし、その勇猛さの半面冷酷で協調性に欠け、女子供でも容赦なく殺しまわり、ムスリムのみならず味方からさえも恐れられるかなりのトラブルメーカーでもありました。即位後もほとんどイングランドに帰らず、十字軍遠征からの帰国後はフランスで領土をめぐる戦争に明け暮れ、最後には矢を肩に受け戦死しました。

片やジョンは軍事的才能には全く恵まれず、謀才のみで勝負をかけるタイプでした。兄が十字軍からの帰途にトラブルを起こしたオーストリア王レオポルト5世に捉えられると、早速王位簒奪を狙い、「兄は死んだ」と虚偽の報告で王位継承を主張し、有力貴族たちを呆れさせたりしています。この企てに失敗するも、リチャードに許してもらうと、兄の死後は何とか王位を継承することに成功します。

ジョンは即位すると早速侵攻を受けたフランスの領地回復に乗り出しますが、連戦連敗でフランス領土をほとんど失いました。さらにローマ教皇イノケンティウス3世とカンタベリー大司教の任命で争い、1209年教皇に破門されます。ジョンはその後もローマ教皇が敵方のフランスに積極的に肩入れするのを見てさすがにマズイと感じたのか、何とここでローマ教皇に全領土を寄進するというヨーロッパ版大政奉還の荒業に出ました。

この謀に意表を突かれたのか、ローマ教皇は一度寄進されたイングランド領をあらためてジョンに授けるという形でこれを許してイングランド介入を取り止めます。その間にジョンは神聖ローマ皇帝オットー4世らと組んでフランス王と対抗しますが、1214年のブーヴィーヌの戦いで敗れ、本国に逃げ帰りました。

ジョンは更なる課税・徴兵による戦争継続を考えて帰国しましたが、待っていたのは、対フランス戦の影響で重税に苦しんでいた諸侯から庶民までの強い反発であり、ジョンはこれに屈し、「法の支配」を明確にし、絶対的な王の権限を大幅に制限する大憲章こと「マグナ・カルタ」への署名を余儀なくされたのでした。

これが1215年6月15日、ジョンが中世イギリスで世界史的に見て早すぎる民主主義の発展に貢献したその瞬間であり、これ以降のイギリス立憲政治の基礎となるものであります。

この後ジョンはマグナ・カルタを無効化しようと教皇と組むなどして色々策謀を巡らせるますが、反発した諸侯がフランス勢力を引き込みイングランドは内乱状態に陥ってしまいます。この事態を救ったのは1216年のジョンの急死であり、諸侯はジョンの息子ヘンリー3世支持に回ったためイングランドは辛うじて救われたのでありました。

ちなみに、ジョンの死因は諸説ありますが、俗説では桃の食べ過ぎと言われております。徳川家康のタイの天ぷら食べすぎ伝説みたいなものでしょうか。

世界史 Word Check!

・大憲章(マグナ・カルタ):
ジョン王が承認した国王と貴族の関係を定めた憲章。貴族の権利を保障し、課税など国王の権限を制限する内容でイギリス立憲政治の基礎になった。

・リチャード1世:
ジョン王の兄、獅子心王の異名を持つ勇猛果敢な騎士であった。アーサー王伝説の宝剣「エクスカリバー」を手にしたと称していたことや、戦争に明け暮れた生涯から見ても英雄願望が非常に強い人物であった。

・ジョン王:
生まれた時に次ぐべき領土が無かったため「欠地王」と呼ばれた。即位後フランス王フィリップ2世との戦いで、フランス西半分のイギリス領をほぼすべて失い、揶揄を込めて「失地王」とも言われた。教皇イノケンティウス3世とも争い破門され、更には勝てない戦で財政困難を引き起こし、重税を課す無能ぶりに、有力貴族に反発され、ついには王権を制限するマグナカルタを認めざるを得なくなった。

なお、当時の重税による庶民の苦しい生活の不満から、義賊「ロビンフッド」の物語が作られた。ジョンはその間抜けな敵役として常にロビンフッドに逃げられ、最後に十字軍遠征から戻ってきた獅子心王リチャードにこっぴどくお仕置きされる。現在の「ヒール役」ジョン王のイメージを決定づけた、庶民の願望が反映されたストーリーが展開されている。

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