受験勉強は何の役に立つのか、と時々思うことはありませんか。もちろん入試に必要で、大学に進学した後も受験勉強で習得した知識を元に学習や研究をしていくので、その意味では確実に必要です。でも経済学部で漢文の訓読をするのか、生命科学の実験で政経の知識が必要か、と問われると多分必要ない。
ただもう少し難しく言えば、体系化された知識を的確に把握して自分のものにしていく、という訓練にはなります。
でもここで書きたいのはそういったこととは少し違う視点の話です。
社会人になって働き始めると痛切に感じるのですが、仕事とはどこまでいっても自分以外の相手がいるということです。相手はお客さんかもしれませんし、一緒に仕事をする仲間かもしれません。いずれにしても一人では完結しない。一人で完結する営みは趣味と言います。
一方、勉強って一人でしますよね。大学に行っても同じです。もちろん共同研究といったこともありますが、それは受け持ちの範囲を担当するという側面が強いので、やはり一人の時間が大きい。
一人の時間。これが、受験勉強がみなさんに与えてくれる贈り物の一つだと私は思います。なんのことかいまいちピンとこないと思いますが、いずれ分かる時が来ます。社会に出て仕事をするということは、自分ではコントロールできない他人とのやりとりを続けていくことであり、だからこそ思い通りにいかず、結果として誰でも辛い思いを経験します。そしてその辛い時、最後の助けになるのは、親でも友人でもなく自分自身でしかないことに気づく時がやってきます。自分しか自分を守れないと分かった時、一人で過ごした時間が役に立ちます。一人の時間を過ごし自分と向き合った経験を持つ人は、次に進むことができます。受験勉強とはそんなものです。
教室長 小松